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おれたち働きたいんだ! ルポ年越し派遣村

「他人事とは思えない」 北茨城からも支援物資

県内「派遣切り」の入村者も

北茨城市から米20㌔を持参した男性

北茨城市から米20㌔を持参した男性=東京都千代田区の日比谷公園「年越し派遣村」

 東京・日比谷公園「年越し派遣村」には、連日行き場を失った失業者だけでなく、各地から支援物資や募金、ボランティアが集まってきた。

 「他人事とは思えなかった」。北茨城市在住のパート従業員男性(59)は2日に米20㌔をリュックサックに背負って派遣村まで持参してきた。

 ボランティアは2日までの3日間で、延べ772人が登録。学生や労働組合員などが活動した。中には派遣村で受けた「一宿一飯の恩義」を感じて、恩返しに活動する"村民"もいた。

 入村手続きの窓口応対に当った村民ボランティアの1人は「あの派遣会社にいたの? 実は自分もいたんだよ」などと失業者に声を掛ける。心理面でのケアになるという。

通報きっかけに失業


 派遣村に来る人の多くは、失業などをきっかけに「滑り台から滑り落ちる」ように社会保障のセーフティーネットから落ちて、路上生活を送るはめになるという。

 「茨城県内の工場で働いていた」という30代後半の男性は「会社が違法な『派遣切り』をやっていた」と証言する。手口は「派遣労働者を個人請負労働者に切り換えていた」というもの。

 個人請負は派遣労働者と違って、最低賃金法や労働基準法の保護を受けられない「究極の低コスト労働者」と言われ「偽装雇用」との批判が強い。男性は茨城労働局に通報したが、通報がきっかけで失業。派遣村にたどりついた。

 岩手県奥州市出身の男性(29)は、派遣村に来るまでの間は東京・上野近辺で路上生活を送っていた。1週間前までは栃木県内の電気機械工場で「更新なしの3カ月契約」で派遣社員として働いていた。契約期間終了時「『次の(派遣)場所が無い』と派遣会社の人に言われた」。さらに生活していた寮を「すぐ出て行って欲しい」と言われ、寮を追い出された。

 寮費は1カ月4万円。光熱費は1万5千円の定額で、給料から差し引かれていたという。男性は「正社員になろうとして何回も履歴書を送ったが駄目だった。金が無いのであせった」と困難な就職活動について振り返り、「すぐ働けるのが派遣だった」と語る。

不明朗な天引き


 東京・太田区から来た男性(37)は、土木・建設関係の派遣労働を行っていた。「金のある時はネットカフェやカプセルホテル。無い時は野宿」と話した。以前の派遣先では、2人相部屋の寮で、寮費は光熱費込みで6万円だったという。

 派遣労働者は、派遣会社から「寮費」「光熱費」の他に、「テレビレンタル料」や「布団レンタル料」などといった給料からの不明朗な天引きが行われている。例として給料が約25万円の場合、寮費や光熱費、さまざまな生活用品の「レンタル料」名目で給料から天引きされると、手元に残るのは12~13万円で、貯金はおろか食べることが精いっぱいの金額となる。(つづく)

(2009年1月9日付「常陽新聞」第1社会面掲載。日付、肩書きなどは掲載当時のまま。)