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おれたち働きたいんだ! ルポ年越し派遣村

「衰弱しきっている」 失業者であふれ返る村

就職支援、生活保護の受給相談も

炊き出しに並ぶ失業者たち

炊き出しに並ぶ失業者たち=東京都千代田区の日比谷公園「年越し派遣村」

 「年越し派遣村」最終日を前にした4日にも、続々と失業者たちが集まってきた。実行委員会は「池袋での炊き出しが終わったから、そこから(失業者たちが)流れてくる可能性がある」という。3日時点での入村者は計410人。厚労省講堂はすでに満杯で、日比谷公園のテントも多くの入村者であふれていた。

 県内から徒歩で派遣村にたどり着いた失業者の事例や、神奈川県内で自殺未遂を図った失業者が警察に保護され、警察官に同行されて派遣村に来た事例があったという。また「3日3晩野宿して派遣村に来る人が多く、(派遣村に)たどりついて食事や暖を取れてほっとしてかえって体調を崩す。それほどまで衰弱しきっている」と窮状を訴える声もあった。

 ほぼ毎日のように救急車が日比谷公園に来ては、衰弱しきった入村者を病院に搬送する光景も見られた。村民の1人は「派遣村ができなかったら、野垂れ死にしていた」という。実行委は「本来は行政がきちんとやるべき」と憤る。

 労働相談や生活相談などの窓口は、1日時点から予定開始時間を繰り上げて午前10時から対応しているが、なかなか追いつかない。就職活動のために履歴書用紙を無料で配布し、履歴書用顔写真の無料撮影をするなど就職支援を連日行っている。

 また、働きたくても働けない人のために生活保護の受給相談も行っており、3日時点で約170人が千代田区の福祉事務所に、生活保護申請をファクスで送ったという。

「水際作戦」への対策


 派遣村に来る人の多くは、失業などをきっかけに「滑り台から滑り落ちる」ように社会保障のセーフティーネットから落ちて、路上生活を送るはめになるという。

 体験者らによると、生活保護申請の窓口では「水際作戦」と呼ばれる方法で、生活保護申請者に対して「あなたはまだ若くて働けるから(生活保護を)受けられない」「借金のある人はダメ」「住所不定の人は申請できない」などと、あらかじめ想定した理由を並べたて、申請用紙さえ渡さないで追い返す事例があるという。このため、申請用紙をあらかじめファクスで送信して「生活保護申請」の意思を表示して、弁護士など同席の上で面談に臨むなどの対応を取っている。だが、生活保護申請が仮に通っても、支給開始決定までの期間中の生活の心配がある。就職活動中の村民についても同様で「(派遣村閉村の)5日以降どうなるのか」との不安がつきまとっていた。

 このため、実行委は厚労省や東京都などの関係機関と交渉を重ね、▽5日以降12日までの期間、東京都内の廃校した小中学校などの施設4カ所で「派遣村」の村民500人を受け入れ、食事の提供▽ハローワークや生活相談など施設内での包括的な出張相談体制の構築▽寮付き求人約4000人分を確保し、就労相談の実施―などで合意した。

野党代表らも激励


 4日午後の村民集会には、民主党の菅直人代表代行や共産党の志位和夫委員長、社民党の福島瑞穂党首、国民新党の亀井久興幹事長、新党大地の鈴木宗男代表が出席し、村民たちを激励した。このうち志位委員長は「ここで起きていることは決して自然災害ではない。ましてや、みなさんに責任があるわけでもない。『政治災害』だと考えている」と語り、鈴木代表の「竹中平蔵(元大臣)は、派遣村に来て(村民の)皆さんに謝れ!」との演説に、村民たちから大きな歓声が沸き上がった。(つづく)

(2009年1月10日付「常陽新聞」第1社会面掲載。日付、肩書きなどは掲載当時のまま。)