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コラム 記者の呟き

 9月27日に取手市内で行われた「小中学校統廃合・台宿保育所廃止反対デモ」に参加した野党市議が「取手でこのようなデモはここ最近聞かない」と驚くほど、保護者や市民の熱気にあふれ、廃止対象となった市立台宿保育所周辺の民家や商店には「台宿保育所を無くさないで」などの廃止反対を訴えるポスターが貼られていた▼署名活動も行われ、保護者たちが「保育所を無くさないで」と訴えたにもかかわらず、1日の市議会で同保育所廃止の条例が議会で可決され、傍聴した保護者や市民からは嘆きや怒りの声が聞かれた▼仕事をしながら子育てする母親にとって、保育所は不可欠の存在だ。「男は仕事、女は育児」と言っていた半世紀前ならいざ知らず、今では夫婦共働きしないと生計が成り立たない家庭が多く、「子どもを保育所に預けて働かないと生活できない」といった切実な声もある。保育所廃止に賛成した議員は「なぜ賛成したのか」を市民に説明する責任がある。(崎)

(2009年10月3日付常陽新聞社会面掲載。)


 「バカにしやがって!」某紙記者は吐き捨てるように怒りをあらわにし、会場から立ち去った▼発端は、3日に龍ケ崎市の流通経済大学で開催された東国原英夫・宮崎県知事の講演会の取材で、私と某紙記者の2人が東国原知事の写真撮影を主催者に要望したところ、一度は許可されたが、一転して「撮影不可」となったため、冒頭のような事態となった▼主催者と再度交渉をしたが「撮影不可」は変わらず、「主催者撮影の写真を電子メールで提供する」という妥協案で合意。主催者は「事前に取材申請してくれれば、腕章着用の条件付きで許可した」と説明した▼事前に取材申請しなかった不手際は認めるが、一般に「政治家の講演会」は取材の事前申請なしでも当日は写真撮影できるのが通例となっている。主催者側は東国原知事に配慮したつもりかもしれないが、東国原知事は「公人」であって「芸能人」ではない。いつまで東国原知事を「芸能人」扱いするのだろうか?(崎)

(2009年10月8日付常陽新聞社会面掲載。)


 「もう話すことはない」。8日の龍ケ崎市大徳町周辺を襲った竜巻で店舗が半壊した和菓子店の店主は、絶え間ない取材対応で疲れきっていた。半壊した店舗は翌日には解体され、空き地になっていた。現場周辺を歩き回っていると、かつて訪れた神戸市の光景が脳裏に浮かんだ▼8年前の1月17日、阪神大震災から6年目を迎えた神戸市内での復興した様子を撮影しようと市内を歩き回っていると、市内中心部各所に空き地が点在していた。「以前はお店や住宅があったけど、震災でつぶれて、そのまま空き地になった」と、撮影で知り合った地元の女性が教えてくれた▼その年の12月に「神戸ルミナリエ」の撮影で再度神戸を訪れたとき、震災から7年目を迎えようとしていたのに、長田商店街のアーケードが補修されないままだったのに衝撃を受けた▼「災害だから国で何とか面倒を見て欲しい」“竜巻被災者の知人”は、被災者の心情を代弁した。8年前の神戸でも、住民から同様の言葉を聞いた。(崎)

(2009年10月16日付常陽新聞社会面掲載。)


 このほど、33歳の誕生日を自宅アパートで一人きりで迎えた。自分で料理したおつまみを肴に第3のビールを飲みながら、それぞれ人生の転機を迎えた友人たちのことを考えていた▼4年前に結婚した同い年の専門紙記者は、来年春には一児の父親になり、年下の女性の雑誌編集者は、今年秋には出産して一児の母になる。しかし、この日本では、結婚どころか就職すらままならず、人並みの生活すら送れない人々が多くいる▼8月の完全失業率は5・5%と、7月よりは若干下回ったものの、雇用情勢は依然厳しい。2007年度の相対的貧困率は15・7%で、7人に1人が年収114万円以下での生活を余儀なくされている。また、子どもの相対的貧困率は14・2%で、そのうち1人親家庭の子どもの貧困率は58%だ▼この国はかつての「1億総中流」から、格差の激しい「生きづらい国」に一変した。しかし、これからの世代のためにも、この国をより良い方向に変えていかければならない。(崎)

(2009年10月29日付常陽新聞社会面掲載。)