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コラム 記者の呟き

 厚生労働省が発表した5月の有効求人倍率は0・44倍(本県は0・42倍)で、1963年以来過去最低を記録した。正社員に限った有効求人倍率は0・24倍で、正社員希望者10人に対し2人分の仕事しか回せず、残り8人は正社員にはなれない▼年代別完全失業率では、15~24歳の失業率は男性9・4%、女性8・3%。25~34歳の失業率は男性6・5%、女性5・9%と、若年層の失業率が高い▼各種データが「仕事が無い」現実を示しているにもかかわらず、いまだに「えり好みしなければ仕事はいくらでもある」と主張する"有識者"がいる。だが"仕事"の実態は、低賃金と劣悪な労働環境の職場が大半だ。中には、あまりの劣悪さのため日本人が逃げ出し「安く使える」と不法滞在外国人を酷使する職場が少なくない▼「えり好み~」を口にするならば、劣悪な労働環境で不法滞在外国人を酷使しなければ成り立たないビジネスモデルを改善するのが筋ではないのだろうか。(崎)

(2009年7月3日付常陽新聞社会面掲載。)


 先日、同僚記者から私が執筆した「クローズアップ」や本欄コラムの件で「"怒り"しか書いていない」と問題提起があり、議論した▼6月22日付「クローズアップ」では、元派遣労働者の体験談を中心に、「自由と生存の家」で再出発を図るまでの経緯を書いた。これまでも、本欄でも昨今の社会情勢を考慮して、労働問題や生活問題を「重要な問題」と考えて取り上げてきた▼失職した派遣労働者の中には、学歴や職歴の問題ゆえに「社会を要領よく生きられなかった人」が少なくない。彼らの心中には不当解雇された怒りだけでなく、生活の不安、人生への迷い、悩みもある。それをどこまで書けたか、と自省することもしばしばだ▼労働・生活問題は、政治・経済・社会の分野にまたがる複雑な問題だ。確かに、社会に対する"怒り"だけではどうにもならない。だが、"悩み"や"迷い"も含めて声を上げていかなければ社会は動かない。本欄が、この一助になればと思う。(崎)

(2009年7月9日付常陽新聞社会面掲載。)


 「…見てみます?」約2年前、ある女子高校生は長袖から傷だらけの両腕を見せた。「リストカットか…」「驚かないんですか?」「…あぁ。以前、取材先で見たことあるから」▼女子高校生は、以前は県南地区の全日制高校に通っていたが、いじめに遭い精神的に不安定になり、リストカット(自傷行為)をするようになった。高校を退学し、その後は精神安定剤を服用するなどして、通信制高校に再入学▼アニメや漫画に興味があり、自分でも漫画調のイラストを描くという。とりわけテレビアニメ「ポケットモンスター」に登場する「ピカチュウ」がお気に入りで、「ポケットモンスター」の特集記事が掲載された新聞を渡すと、笑顔を見せた▼彼女のように、いじめ被害を受けた人間の精神面の回復は容易ではない。しかし、いじめ加害者は、法の裁きどころか、何の社会的制裁も受けずにいる。もし、神が存在するのなら、いじめ加害者に「神の裁き」が下ることを祈る。(崎)

(2009年7月23日付常陽新聞社会面掲載。)


 「訴状がまだ届いてなく、現時点では確認ができないので、コメントができない」このありきたりなコメントを出すのに、東京の外資系消費者金融は約1時間も待たせた。これで2度目。市税滞納者が持つ「過払い金債権」の支払いをめぐって同社と交渉した稲敷市職員の苦労が分かる気がした▼同社については、多重債務問題に詳しい市民団体などの間では「(悪い意味での)外資系らしく、企業業績が悪くなると社員を強引にリストラする」など悪評が高い。消費者金融業界に関しては、つい最近も某大手消費者金融会長が外部の人間に指示して、週刊誌に同社の批判記事を書いたフリーライターの電話を盗聴した事件があるなど、法令無視の体質が根強く残っている▼問題の外資系消費者金融HPでは「コンプライアンス(法令順守)」の項目があるが、そもそも利息制限法という「法律」を破っておいて、29・2%の高金利で貸し付けるとは「コンプライアンス」が聞いてあきれる。(崎)

(2009年7月31日付常陽新聞社会面掲載。)