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コラム 記者の呟き

 11月に入り、鍋物の恋しい季節になった。自宅アパートから小型バイクで約15分ほど掛かる牛久市内の24時間営業スーパーで、1丁35円の木綿とうふを購入し、湯豆腐を作る。他の豆腐と違い、かなり水っぱく、湯豆腐にすると煮崩れしやすい。それでも、週に2~3回は「35円豆腐」での湯豆腐をさかなにペットボトル焼酎で晩酌をする▼友人の専門紙記者がブログで「1丁35円の豆腐や1本690円のジーンズなんか買いたくない」という内容の記事を書いた。低価格商品は大手小売業者の値下げ圧力を受けた零細企業やその労働者の犠牲で成り立っている、との趣旨だ▼しかし、ブログのコメント欄には「言っていることは正しいが、現実には、低価格商品しか買えないワーキングプア層が存在している」という趣旨の反論が多く来た▼低価格商品の影で苦しむ犠牲者がいる。しかし、低価格商品なしでは生きられない低賃金労働者も存在する。この問題についての明確な答えは、見えてこない。(崎)

(2009年11月5日付常陽新聞社会面掲載。)


 学校給食の取材で「茨城では中学校でも給食があるんですか?」と、ある市職員に質問したら、反対に「中学校のときに給食が無かったんですか!?」と驚かれた▼私の出身地の岩手県宮古市では、小学校は完全給食だったが、中学校は「牛乳だけ給食」で、生徒たちは弁当を持参した。1989年~92年ごろの実話だ▼近年「給食費を払わない親」が問題になっているが、傾向として「子どもの給食費すら払えない生活困窮世帯」と「子どもに何の関心も示さない"失敗家庭"世帯」に大別される。前者については一部自治体では給食費減免制度があるので、制度の利用を呼び掛ければ問題解決の可能性は高い。しかし、過去に「国保保険証を取り上げられた」などで自治体に警戒感を抱いている場合があり、警戒感を解く説得が必要だ▼後者の場合は「育児放棄」など児童虐待の可能性があり、児童相談所など関係機関との連携が求められる。いずれにしろ、学校だけでは対処しきれない深刻な問題だ。(崎)

(2009年11月12日付常陽新聞社会面掲載。)


 「選挙では"爆弾"が飛び交った」。ある元金融機関幹部が選挙にまつわる「昔話」を話してくれた。「"爆弾"が飛び交った」と言っても、イラクやアフガニスタンのような戦時下の選挙のことではなく、"爆弾"とは「現金」の隠語。つまり「買収行為」のことだ▼手口としては、選挙期間の最終日または最終日前日に、情勢が思わしくない陣営の運動員らが市営住宅などの公営住宅がある地域を中心に戸別訪問して、選挙チラシなどの中に現金を紛れ込ませて有権者に配布したという。また、買収をけん制するために、相手陣営の運動員らが各地区の街角に立ち、運動員の動きを封じるといったこともあったという▼12月には龍ケ崎市で市長選・県議補選・市議補選のトリプル選挙が行われる。県内でも東京に近く「茨城都民」の多い同市では「昔話」のようなことはあり得ないと思うが、くれぐれも「"爆弾"が飛び交う選挙戦」ではなく、政策本位の「都市型選挙」で勝負してもらいたい。(崎)

(2009年11月19日付常陽新聞社会面掲載。)


 「うわぁ、"冷や飯組"が冷や飯食ってらぁ!」地域情報誌勤務時代、年上の編集部員から「ご飯とツナ缶詰だけの弁当」を笑いものにされた。東京の広告代理店勤務時代にも同様の弁当を持参したことがあったが、周囲の先輩社員たちは「岩手から出てきて茨城で一人暮らしじゃ、しょうがないか」と、一応は理解してくれただけに、かなりこたえた▼茨城県南にあるイタリア料理店での「スパゲティ1皿900円」という価格を聞いた実家の母親は「我が家の1日分の食費」と驚き、「昼食は280円の牛丼」との話を聞いた父親は「ぜいたくだ」と怒鳴った上で「おまえ、岩手の最低賃金がナンボか考えたことがあんのか」とさらに怒鳴った。このような反応の背景には、岩手県の最低賃金が610円台と低い上、時給は最低賃金とほぼ同水準という事業所が多いことがある▼このような話を東京や茨城県南在住の友人・知人にすると逆に驚かれ、「関東と北東北とのギャップ」を痛感させられる。(崎)

(2009年11月26日付常陽新聞社会面掲載。)