
パワハラ防止へ龍ケ崎市が県内初の要綱
労組も取り組む

龍ケ崎市のパワハラ防止啓発ハンドブック「知っていますか?パワーハラスメント」
仕事上の上下関係・権利関係を不当に利用した嫌がらせやいじめ、いわゆる「パワーハラスメント」(通称・パワハラ)が社会問題化している。茨城労働局によると、2008年度に総合労働相談コーナーに寄せられた個別労働関係紛争5416件中「いじめ・嫌がらせ」が735件にもおよび、1位の「解雇」(1543件)に次ぐ高さで、過去6年間で最高となっている。そのような中、龍ケ崎市が県内初のパワハラ防止を盛り込んだ要綱を策定するなど、パワハラ防止に向けた取り組みが始まっている。
茨城労働局がまとめた「いじめ・嫌がらせ」の中には、パワハラも含まれる。しかしパワハラかどうかの内訳は調査しておらず、どれくらいの割合かは今のところ不明だ。(崎山勝功)
4カ月経過しゼロ
龍ケ崎市では05年に「セクシャル・ハラスメント苦情処理要綱」を制定した。今年4月、パワハラ防止や排除、パワハラが発生した場合の対応などを新たに盛り込み、「龍ケ崎市職員のハラスメント防止に関する要綱」に改正した。
ハラスメント要綱改正に伴い、同市では市職員に向けて、パワハラのない職場にするための啓発ハンドブック「知っていますか?パワーハラスメント」を作成し、配布した。
市総務部人事課の直井幸男課長は、防止要綱改正後4カ月が経ち、職員からパワハラの訴えがあったかについて「今のところは無い」としている。理由については、防止要綱の周知や啓発だけでなく「パワハラ、セクハラにしろ『起こさないようにしよう』という心掛けが大きい」と述べた。
また直井課長は「市役所ばかりではなく、一般企業でも『(龍ケ崎市役所が)ハラスメントの防止を作っているんだ』というのが広まれば、一般市民レベルでの意識の啓発につながる」と、いまだにパワハラ防止マニュアルを策定していない民間企業に対し、パワハラ防止の啓発に期待を寄せている。
ある市職員は、近隣の一部自治体で職員に対するパワハラが問題になっている例を挙げ「(龍ケ崎市の)パワハラ防止要綱のことを知ったら、うらやましがると思う」との見方を示した。近隣の一部自治体では、職員組合の機関紙で「どなり声が毎日のように響いている」など「職員に対するパワハラ問題」が取り上げられているという。もし「パワハラ防止要綱」が県内各自治体で策定されたら、ある程度の抑止力になることが想定される。
労組もハンドブック

「フリーター労組の生存ハンドブック~つながる、変える、世界をつくる」
パワハラ問題に関しては、公務員や民間企業の正社員だけでなく、非正規労働者でも問題になっている。このほどフリーター全般労働組合(本部・東京都新宿区)の清水直子委員長と同労組員の園良太さんを中心に、同労組員が執筆した「フリーター労組の生存ハンドブック~つながる、変える、世界をつくる」(大月書店発行)が出版された。同書では労働分野全般をはじめ生活保護申請の方法、労働組合の作り方のほかに、「セクハラ・パワハラに負けない」として、パワハラ問題への対処方法を紹介している。
同労組と友好関係にある茨城不安定労働組合(茨城不安労)によると、「今のところ明白にパワハラで相談に来たケースはない」という。しかし、水面下ではパワハラ被害が起きていることが予想されることから、茨城不安労では「パートやアルバイト、派遣など非正規で立場が弱いからといって泣き寝入りすることはない。組合に入って一緒に解決しよう」と、パワハラ被害者に対して相談を呼び掛けている。
□※パワーハラスメントとは、職権などのパワーを背景に、本来の業務の範ちゅうを超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、就業者の働く関係を悪化させ、あるいは雇用不安を与えること。
パワハラと判断される可能性が高い事例として▽解雇されるほどの理由が無いにも関わらず「クビにするぞ!」と脅すなど、半ば強制的に労働者を従わせようとする行為、または転職や退職を促すような発言▽ささいなミスにもかかわらず必要以上に怒鳴りつけたり、公衆の面前で指摘を繰り返すなど、必要以上にミスを追及する行為▽時間内ではとても終わらない仕事を押し付けたり、サービス残業を強制的に行わせるなどの残業を強要する行為▽労働者に対して無視する、または仕事を与えない行為▽飲み会などの参加を強要、または飲酒を強要し、それらの誘いを断った際に仕事上で不利な扱いをする行為など。
これら前述の行為に付随して、殴る蹴るなどの暴力行為を伴った場合は、刑法上の傷害罪に問われる可能性もある。
(2009年7月27日付「常陽新聞」1面掲載。日付、肩書きなどは掲載当時のまま。)