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特集

保証人なしでも支援資金貸付

ハローワークに支援パンフ設置

失業者支援体制拡充へ

新しいセーフティーネット支援ガイドと生活福祉資金貸付制度のパンフレット

新しいセーフティーネット支援ガイドと生活福祉資金貸付制度のパンフレット

 雇用不安が広がる中、県社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度が昨年10月から一部改正され、以前は必須だった連帯保証人がいない場合でも利用できるよう緩和された。ハローワークでは、支援基金を受給しながら新しい技術を身に付ける訓練や研修制度が充実するなど、失業者支援体制が拡充されつつある。しかし課題も見えてくる。(崎山勝功)

不要でも利子付き


 これまで、生活福祉資金の貸し付けを受けるには連帯保証人(緊急小口資金は除く)が必要だった。保証人に対しても「最終償還時に70歳以下」「健康で相当の収入または資産を有する者」という条件が付けられ、連帯保証人をだれにも頼めない生活困窮者からは「絵に描いたもち」といわれた。

 改正後は「連帯保証人を立てない場合でも利用できる」となり、高かったハードルが下がった。ただし、社協の担当者は「できれば保証人を立ててほしい」と、できる範囲で連帯保証人を求める。連帯保証人がある場合は無利子だが、無しの場合は年間1・5%の利子が付く。

利用者6倍に


 一方、2001年に導入された従来の失業者向け「離職者支援資金」は、連帯保証人に加えて条件の厳しさなどから「名ばかり離職者支援」との批判があった。

 代わって09年10月から新しく導入された「総合支援資金貸付」は、低所得世帯を対象に①最長12カ月間の生活費②アパートの敷金・礼金などの住宅入居費③一時生活再建費の3分野で支援が受けられる。県南のある社協関係者は「(前の制度と比べて)利用者は約6倍に増えた」と話す。

 ただし貸付対象者は、低所得世帯であって、▽収入の減少や失業などにより生活に困窮し、日常生活の維持が困難▽借入申込者の本人確認が可能―など6項目すべてに該当し、ハローワークへの求職申込と職業相談が必要となる。この場合でも連帯保証人ありの場合は無利子だが、連帯保証人無しの場合は年間1・5%の利子がつく。

履歴によりハードル


 だが一方で、過去に消費者金融で金を借り、法的整理を受けた経験がある人にとってハードルは高いままだ。

 ある労組関係者によると、県内の企業に勤務する30代の男性会社員が、会社の業績悪化に伴い退職勧奨を受け、県が実施している「失業者等緊急生活支援」を申し込んだ。

 男性は窓口で「過去に消費者金融から借りて、法的整理を受けたことがある」と話すと、職員から「審査が通る可能性は低い」と告げられたという。

受講科目に制限


 現在ハローワークや社協窓口では「新しいセーフティーネット支援ガイド」のパンフレットを設置し、ハローワークや社協、地方自治体で実施している各種支援制度を紹介している。

 総合支援資金貸付、雇用保険のほか▽住宅手当▽就職安定資金融資▽訓練・生活支援給付▽臨時特例つなぎ資金貸付▽就職活動困難者支援事業▽長期失業者支援事業のほか、生活保護制度も紹介もされている。

 このうち「訓練・生活支援給付」を受けて「緊急人材育成・就職支援基金」の基金訓練を受講している男性は「基金訓練受講の手続きで、提出書類が結構多い」と問題点を指摘する。基金訓練の手続きだけでも、ハローワークで求職カードを作成から手続き完了まで、7段階の手続きが必要だ。

 現在、男性は同基金訓練の実践演習コース「ネットワーク技術者養成科」でIT関係の資格取得を目指している。同訓練では▽職業横断的スキル取得訓練コース(職業横断コース)▽基礎訓練コース▽実践演習コースの3種類で、制度的には「職業横断コース→基礎訓練コース→実践演習コース」と受講するような連続受講は可能だが「その逆は不可」という。また、実践演習で他にも受講してみたい科目があったとしても、「実践演習を2回受講するのも不可」という。

 男性は講座の中に「ネットワークサーバ講座」があり、男性の過去の職務とも適合するもので「ぜひ受講したかったが、基本的制約にあって受講できないのが実に残念」と、悔しさをにじませ「できれば複数回受講が出来るようになって欲しい、せめて途中で科目変更が出来るようにして欲しい」との要望を寄せた。

親が年老いたら


 こうした「第2のセーフティーネット」が拡充される背景には、失業が長期化し、生活困難から生活保護受給者が増大している事情がある。

 常総市では2008年10月時点での生活保護受給人数が269人だったのに対し、わずか1年後の09年9月末時点では341人に増加している。同市は受給者増加の背景について「『派遣切り』などで職を失い、ハローワークに行っても職が見つからない」と説明する。

 ある労組関係者は「親が年老いて『親というセーフティーネット』が機能しなくなった場合、いまの若い世代は生活困難に陥る」と、生活保護受給者が将来急増する事態になると警告を発する。

(2010年2月1日付「常陽新聞」1面掲載。日付、肩書きなどは掲載当時のまま。)