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融資条件に高いハードル 社協の生活福祉資金貸付制度

相談55件も貸し付け7件

生活福祉資金貸付制度のパンフレットと貸付基準

生活福祉資金貸付制度のパンフレット㊨と貸付基準

 失業者や低所得者など生活困窮者が増えているにもかかわらず、社会福祉協議会が年利3%または無利子で貸し付けている「生活福祉資金貸付制度」の利用率がそれほど増加していない。とりわけ「離職者支援資金」は、2008年4月~09年1月までの貸付件数は5件だけで、07年度は0件だった。なぜ資金需要が拡大しているにもかかわらず、貸付件数が少ないのか。背景を追った。(崎山勝功)

貸付率12・7%


 龍ケ崎市社会福祉協議会によると、08年4月~09年1月までに、同貸付制度に関する相談は55件あった。しかし実際に貸し付けが行われたのは、離職者支援資金1件を含め計7件だけ。貸付率はわずか12・7%だった。

 一方、県全体では09年1月までの10カ月間に、116件の貸し付けを実施した。このうち修学資金が43件、緊急小口資金が43件、離職者支援資金は5件で、このほかに、福祉自動車や福祉用具の購入などがあったという。

 貸付件数が少ない件について県社協は「昨年度に比べて多い」とし、相談者に対して「門前払いはしていない」と、相談者を門前払いする、いわゆる「水際作戦」の存在を否定する。

たらい回し


 県内のある社協関係者は、相談件数に対し貸し出し件数が少ない理由について「県社協の審査で落ちることがある」と話し、その多くが「保証人の不備」だとする。

 相談に来る人の中には"多重債務者"が少なくないので「貸付相談の中で、(相談者の)生活の見直しをすることもある」という。

 別の社協関係者は「多重債務者などが来るから、できれば(生活福祉資金貸付制度を)広めたくない」との消極姿勢を見せる。県内自治体の社協でも、牛久市社協のようにホームページで告知している事例があるが、自治体の社協によって取り組みにバラつきが見られる。

 ほかに「生活保護ではなく、社協(生活福祉資金)に来ることもある」と、市役所の生活保護窓口など行政機関から紹介されて来るケースが多いとの実態を明らかにした。

連帯保証人


 生活福祉資金の貸し付けを受けるにはさまざまな条件が課される。

 とりわけ高いハードルといわれるのが、連帯保証人(緊急小口資金は除く)で、保証人に対しても「最終償還時において70歳以下」「健康で相当の収入または資産を有する者」との条件が付けられる。

 連帯保証人を頼む相手がいない失業者や低所得者などの場合、「保証人不要」の消費者金融から生活費を借り、それがきっかけで多重債務に陥るケースもある。

名ばかり支援


 失業者向けの「離職者支援資金」を借りるには、連帯保証人に加えて以下の条件をすべて満たす必要がある。▽多額の預貯金を保有していない▽求職活動などを行っている▽就労すれば生計が維持できる▽離職して2年(特別の場合は3年)を超えていない▽雇用保険の一般求職者給付を受給していない―の5条件だ。

 この条件に抵触すると貸付を受けられないことから、非現実的で「名ばかり離職者支援」だと批判する声もある。

※生活福祉資金貸付制度 生活福祉資金貸付制度は、全国都道府県の社会福祉協議会が、各市町村の社会福祉協議会を窓口に設けている制度。▽更生資金▽福祉資金▽住宅資金▽修学資金▽療養・介護資金▽緊急小口資金▽災害援護資金▽離職者支援資金▽長期生活支援資金の9種類がある。

 貸し付け対象世帯は▽低所得世帯(生活保護基準の1・7倍程度の収入の世帯。教育費、家賃などは別に加算)▽障害者世帯(身体・知的・精神障害者がいる世帯)▽高齢者世帯(日常生活で療養または介護を要する65歳以上の高齢者がいる世帯)▽失業者世帯▽低所得高齢者世帯。

 貸付条件は原則として▽現在地に6カ月以上居住▽高齢者世帯を除き借受人の年齢が65歳以下▽同一世帯に対する資金の再貸し付けは3回が限度▽保証人の年齢は、最終償還時に70歳以下▽保証人は健康で相当の収入または資産を有する者▽修学資金の償還期間は10年以内など。

 このうち「離職者支援資金」は、2001年の政府の総合雇用対策の一環として設けられた低所得世帯向け公的支援制度。貸付額は、月額20万円(単身者は10万円)を限度に、再就職するまで最長1年にわたり年利3%で貸付。返済期間は7年以内。

(2009年4月5日付「常陽新聞」1面掲載。日付、肩書きなどは掲載当時のまま。)