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県内でも「派遣切り」 1720人が失業へ

大みそかから東京で「派遣村」開設

炊き出しや生活相談などを実施へ

求職者たち

求人検索用端末で仕事を探す求職者たち=龍ケ崎市若柴町のハローワーク龍ケ崎

 全国各地で年末にかけて、派遣社員などの非正規労働者の派遣契約を中途解除する、いわゆる「派遣切り」が問題になっている。厚生労働省が26日に発表した全国調査によると、全国で約8万5000人の非正規労働者が来年3月までに失業するという。そのうち本県では1720人の非正規労働者が失業する。

 日立建機土浦工場(土浦市神立町)では、派遣社員400人が来年1月までに契約解除され、期間従業員500人が契約更新を見送られ、事実上「解雇」されるなど、県内でも「派遣切り」の動きが見られる。年末に苦境に立たされる非正規労働者の実情を追った。(崎山勝功)

「派遣切り」の動きは11月ごろから


 労働組合「派遣ユニオン」(東京都新宿区)など11組合が合同で11月29、30日の2日間に実施した「派遣切りホットライン」には、全国で472件の相談が寄せられた。このうち茨城県内からは13件の相談があった。

 全国から寄せられた相談内容の内訳(複数項目分類)では、「契約中途解除(解雇)」が219件と最多で、次いで「契約更新拒絶」129件、「住居問題」72件となっている。

 このうち「日立建機で働いている派遣社員」から、「(派遣契約を)年内に切られる。寮も出される」という相談が寄せられた。同組合では「寮を出る必要はない。中途契約の解除は違法」とアドバイスしたものの、相談した派遣社員とはその後の連絡が途絶えてしまい、連絡がつかない状態だという。同組合によると「日立建機の話は、(新聞報道前の)11月時点から来ていた」と語る。これに対し日立建機土浦工場勤労課は契約打ち切りについては「経営上の問題なので、一切答えられない」という。

秋から増える求職者「契約解除」のうわさにおびえ


 派遣契約解除など雇用情勢が悪化していく中、ハローワークを訪れる求職者が増加している。工業団地を持つ龍ケ崎市や牛久市、取手市などを管轄するハローワーク龍ケ崎によると、「全国的な傾向」としながらも「秋以降に求職者は増えている」と語る。求職者の中には非正規労働者などの姿も見られる。

 取手市にはキャノン取手事業所があり、多くの期間従業員が働いているが、同社が大分県の大分事業所で派遣労働者たち約1100人を年内で契約解除したり、栃木県の宇都宮工場で請負労働者たち約600人を来年1月末までに契約解除するなどの報道を受けて、同市内でも「いつ(キャノンの期間従業員)切られるか」とのうわさが、市民の間で流れている。キャノン本社広報部は、取手事業所や阿見町の同社阿見事業所での人員削減について「まだお話しできる段階にはない」としながらも「取手や阿見では複合型コピー機や液晶基板などを作っているので、デジタルカメラを作っている(人員削減をした)大分や宇都宮とは違う。ただ、どの事業も厳しい状況」と述べるにとどまった。

大みそかに東京で「派遣村」開設へ。炊き出しや生活相談などを予定


 相次ぐ「派遣切り」対策のため、全国の一部地域のハローワーク(県内では水戸と日立)では30日まで窓口を開設するが31日以降は窓口が閉まるため、労働組合「全国ユニオン」(東京都新宿区)では31日から、失業した派遣労働者のために東京都内の霞が関、日比谷周辺で「年越し派遣村」(「派遣村」実行委員会主催)を開設する。仕事と住居を失った「派遣切り」被害者の労働相談、住居相談、生活相談の窓口を開設するほか、朝・昼・夕方の食事の炊き出し、ハローワークが開く来年1月5日までの簡易宿泊などの活動を行うという。

 予定では31日午前10時に「開村式」を行い、同日から1月4日まで相談活動(相談時間は午後1時~午後6時)を行うという。5日には厚生労働省への要請行動も計画している。詳細については29日に、記者会見で明らかにする予定。「派遣村」事務局の全国ユニオン(東京都新宿区)では現在、炊き出し用の食料や運営費用の寄付を求めている。食料などの送り先は、〒160・0023東京都新宿区西新宿4の16の13MKビル2階 全国ユニオン「派遣村」実行委員会(電話03・5371・5202)まで。

(2008年12月29日付「常陽新聞」1面掲載。日付、肩書きなどは掲載当時のまま。)