
国内最大の同人誌即売会 来年3月、水戸で開催
海外で「日本文化発信地」と紹介
5万人強来場、活性化に期待

「コみケッとスペシャル5in水戸」のPR活動=東京都江東区有明の東京国際展示場
夏と冬の年2回開かれる国内最大の同人誌展示即売会「コミックマーケット」(通称コミケット、コミケ)の特別企画が、来年3月21、22日の2日間にわたり水戸市泉町の伊勢甚泉町北ビル(旧京成百貨店)などで開催される。「コみケッとスペシャル5in水戸」で、一般公募で応募があった全国20カ所の開催地の中から、「空きビルや空き店舗を活用しての開催が面白い」として選ばれた。開催期間中は5万人以上の来場者が見込まれ、市中心市街地の経済効果が期待されている。コミケは漫画・アニメ・ゲーム愛好家の間では有名なイベントで、海外メディアは「日本文化の発信地」として紹介している。一方、一部には誤った先入観に基づく偏見もある。(崎山勝功)
3日間で50万人
8月14日から16日の3日間、東京都江東区有明の東京国際展示場(東京ビッグサイト)で、夏の「コミックマーケット76」が開催され、3日間で延べ50万人以上の来場者でにぎわった。会場内には約3万5000のサークルが出展し、漫画・アニメ・ゲームなどの様々な分野を扱った同人誌を販売した。国内外のマスメディアも多数取材に訪れた。
コミケは1975年に始まった。開始当初は32サークルが参加し、来場者は700人程度だったが、年々参加者が増加し、開催期間の延長や会場規模拡大などを経て、現在に至っている。
1989年には宮崎勤死刑囚による幼女誘拐殺人事件で、宮崎死刑囚が過度に漫画・アニメなどに熱中していたことから、漫画愛好家らが集うコミケが世間の非難を受けたが、逆にコミケの存在が社会に知られるようになった。
女性の割合多く

人気アニメキャラクターに扮した女性参加者たち=東京都江東区有明の東京国際展示場
コミケは一般に「漫画・アニメ好きな男性の集まり」と見られがちだ。しかしコミケ準備委員会によると、参加者の割合は女性57%、男性43%。出展サークルの参加者は女性71%、男性29%と、女性の割合が多い。
出展者の平均年齢は男性28・6歳、女性28・3歳で、一般参加者の平均年齢は25~26歳前後となっている。また、アニメキャラクターなどの扮装(ふんそう)をして楽しむコスチュームプレイ(通称・コスプレ)の参加者割合は、男性1に対し女性4~5となっており、女性の割合が圧倒的に多い。
クリエーター養成
同人誌は「主義・志を同じくする人たちが、自分たちの作品の発表の場として共同で編集発行する雑誌」(大辞林)と定義され、かつては文学・芸術・学術の分野で多く出版されていた。現代では漫画を中心とするサブカルチャーの表現形態として発達し、「個人が自分たちの作品の発表の場として編集発行する本」も同人誌として扱われている。
コミケで同人誌を制作販売している出展サークルの参加者は「手作りのものを売っている。気に入っていただけた方に買っていただく」と語る。
会場には大手漫画雑誌の編集者も視察に訪れ、同人誌から商業漫画雑誌にデビューする事例もある。未来のクリエーターの養成の場としても注目されている。
一般公募で選定
来年、水戸のコミケを運営するのは「コミケでまちおこしみと実行委員会」事務局の沼田マコトさんだ。「コミケットスペシャルでまちおこしをしたい」との思いから、5年に1度開催される特別企画の開催地公募に応募した。
東京ビッグサイトで先月開かれたコミケ会場の一角では、沼田さんらが「コみケッとスペシャル5in水戸」のPR活動を行い、会場限定発売の菓子「梅さぶれ~ 夏コミに行ってきました。水戸にも行きます。」(亀印製菓製造)も販売した。
「水戸」のPR活動に対する参加者の反応は上々だ。会場でPRチラシを配布したスタッフの一人は「県内の参加者から『茨城で出来るのがうれしい』という声が寄せられいる」との反応の良さを語る。
水戸市内で開催となれば、会場での同人誌販売をはじめ、県内外からの来場者が電車やバス、タクシーなどを利用するほか、商店街の飲食店での飲食などの経済効果が期待され、県央地域経済の活性化につながると見込まれる。
さらに屋外のコスプレ会場では、つくば市から参加した20代女性は「車で行けると思うので、けっこう楽しみ」と、水戸での開催に期待を寄せていた。
アニメキャラクターのコスプレ愛好家が集まることで知られる東京・秋葉原でも、20代のメイド喫茶女性店員が、水戸開催について「できれば参加したい。夏コミはコスプレのウィッグ(かつら)が蒸れて大変なので、冬コミのみ参加している」と語った。別の20代のメイド喫茶女性店員は「ぜひ行きたい」と強い興味を示している。
(2009年9月22日付「常陽新聞」1面掲載。日付、肩書きなどは掲載当時のまま。)